この曲のショートバージョンは、ニューヨークの『Visionaire』という毎回テーマやコラボレーターを設定して発行される本というか商品というか、のために1年くらい前に作ってあったんです。その『Visionaire』の最新号は音楽特集号で、U2、オノ・ヨーコ、コートニー・ラブ、デビット・バーンからローリー・アンダーソン、クリスチャン・マークレー、アレクサンダー・マックイーンなどなど、ポップ〜現代音楽の音楽家は勿論、ファッションデザイナーからスーパーモデルまで、総勢60(?)組のアーティストが、それぞれ一分間の曲を持ち寄るという企画だったのです。日本からは坂本龍一さんや藤原ヒロシさん、テイトウワさんらと一緒に僕も参加することになって、『sex』という一分間の曲を作ったんです。今回のアルバムに、それをそのまま収録するのもありかなとも思ったんですが、敢えてロングバージョンを作って収録することにしました。「SymmetryS」のアルバムが、いきなり『sex』というタイトルの曲で始まって、曲中でもsexという言葉がとにかく連呼されるのが馬鹿馬鹿しくていいなと(笑)。小林くんも、いきなりド頭からリスナーを突き放す感じが非常に効果的ではないかと言ってくれたし。Fantastic Plastic Machineとして、最新鋭のダンスミュージックを作るという成果も同時に果たしていると思うし、ヘッドフォンオペラという意味で聴覚的な部分でもかなり攻めた楽曲だと思ってます。
02 Record of Records
元々は、「ユニクロック」という、ユニクロのホームページ上で、時計と映像と音楽がリアルタイムで更新されていくような面白い企画の為に作ったトラックだったんですけど、小林くんにその音楽を投げてみたら、こういう答えが返ってきたんです。僕にとってみれば、以前「ラーメンズに自分の楽曲をリミックスしてもらいたい」と考えていたことって、こういうことだったんだなと。僕が楽曲に、小林くんがナレーションを載っけることによって、まったく違うドラマや意味が生まれてしまった。
この曲の前後に、カップラーメンを作っている音を入れてあるんですけど、これはジャスト3分なので、3分計として使ってもらっても全然構わないんです(笑)。最初の「レディ、セット」から、目をつぶって聴いてもらいたい。例えば、「ハードル110メートル」の世界最高記録とか、めちゃめちゃ早いんですよね。20秒のすぐあとに、「自由形50メートル」と言うんですけど、あっという間なんですよ。じっくりと聴いて、人類の偉業ひとつひとつに感動していってもらいたい。ノリがいいから聞き流しちゃうんですけど、ひとことがすごいこと言ってますから。さらに歌詞カードを見てびっくりしてもらいたいですね。1分10秒には、「布団に羽毛早詰め」の世界記録があったり、「ボローニャチーズサラダサンドイッチを足で作る」は、2分きっていたり。おもしろいですよ。
3分間の世界記録という大それた人類の偉業を、単にカップヌードルを待つために利用してしまう、ものすごい贅沢。そういうとんちもあるんです。
03 ミニマムテレフォン
「Record of Records」で出来上がったカップヌードルを食べる男が電話を取るというシチュエーションが、そのままこのネタにつながっていくんです。
「はい」と「ん」と「おーい」と「なに」という言葉だけで構成されているのですが、「はい」は日本語ですけど、「ん」は何語でもないと思うんですよね。アメリカ人が英語で何か言って、僕が「ん?」って言ったら、もう一回言ってくれると思うんですよ。これはワールドランゲージなんです。だから、それだけで物語を作ったら、日本語を知らない人も楽しいし、知ってても楽しいしってモノが作れるかなと思ったんです。感情のやりとりも理解できるし、すんなり聞けるんですよ。この形は、まだ広がる感じがすごくしてるんですよ。僕じゃない俳優でやってもおもしろいと思いますしね。
04 Hones and Clock、06 時報 Break Beats
12 One Minute for Sleep、14 Piano and Clock
小林くんの舞台を観ていても、間に音楽が入ることで一段落つけて次のコントにすんなり入っていけるというか、そういうインタールードが今回の作品にも必要だなと思ったんです。しかもそんなに長い時間の曲ではないほうがいいだろうと。だったら「ユニクロック」用に作った1分間だったり30秒だったりの曲がいろいろあったので、それをそのまま使おうかなと。非常に手前ミソなアイデアではあったんですけど、意外や意外それが功を奏したと思います。時報の秒針の音を音楽上にちりばめたことによって、時間軸とともに作品が進んでいくような感じも出たし、アルバムとしての統一感が生まれましたね。
ドはまりしてますよね。
時報だったり時間だったりが、2曲目の「Record of Records」で象徴されるようにアルバム全体を支配してくれているおかげで、インタールードが効果的な結果をもたらしているような気がします。
05 Koniwa
パックンに参加してもらったんですが、『ミニマムテレホン』と発想が近い作品です。これは、日本人が前半を聴いているとイライラするんですよ。英語圏の人が全然日本語が上手にならないところが。それを、後半はごっそり入れ替えてあって、英語圏の人が聴いたら、日本人にイライラするようになっているんです。こんなコントは世の中になかったはずなんですね。「日本語しかわからない人も、英語しかわからない人も、1本のコントで笑う、しかも違うところで」という設計図がまずあって、そういうものを作るにはどうしたらいいだろうと、このルールを考えて、そこにはめていった感じです。
このふたりの違うやりとりをまた聴きたいと思えるトラックですよね。だから、また次のアルバムではこの二人が登場する新作ができるんじゃないかなと思う。このKoniwaに限らず、このデビューアルバムでは、色んなネタのルールを作ったに過ぎないんですよね。
次はふたりで外に飛び出してみたいですね。奈良の大仏の前で大仏について日本語で説明しているのと、自由の女神の前で説明を聞いている日本人とかね。ラジオドラマには無限の可能性があるんです。これはもう解説不要ですね。ただ、聴けばわかると。肩の力を抜いて楽しめるコントだと思います。
07 No Message Rap (Live)
挑戦的ですよね。『No Massage Rap (Live)』ですから。ライブもめちゃめちゃ盛り上がってたでしょう(笑)。また歌詞がすごいんですよこれが。
アジアの若者が、ジブラさんだったりエミネムだったりをテレビかなんかで観て、「すごいカッコいい!」と思ってあこがれて、見よう見まねでやったラップというニュアンスですね。
彼らが「アー」とか「イエー」とか「ヨー」とか言ってるのが、とにかく「カッコいい!」と思って、そればっかりでやったと。英語も日本語もわからないから、とりあえず聞き取れた「アー」と「ヨー」と「イエー」を駆使してね(笑)。
そしたらお客さんも盛り上がっちゃって、人気が出ちゃったという感じです(笑)。
MC RAPは、アジアの何処かの国の国民的ラッパーです。
ラップって本来はメッセージを込めるものじゃないですか。でも、それがまるでないですからね。当然のごとく。
ひどいですよね(笑)。今の世の中に満足しているんですよ、この人は。
ある意味現代音楽なんですよ。俺に言わせれば、フレクサスとかそういう感じです。レディメイドです、ダダイズムです。深い曲なんですよ。でも、ヒップホップをバカにしているのでもなんでもなく、本当にヒップホップがカッコイイなぁーという気持ちを表現したというか。だって、小林くんは本当にヒップホップが大好きだよね。
本当に好きです。でも、これが今の僕にできる精一杯です(笑)。どこかで何かの形でMC RAPが来日することを期待していてください。
08 Midnight Running
これもインタールードです。ホンダのテレビCMために作った音楽なんですけど、『No Massage Rap』のオーディエンスのかけ声とクロスフェードするように始まっていくんです。お芝居と音楽が、DJ的につながるといいなと思って。
非常に珍しい形ですよね。コントと音楽がクロスフェードでミックスされて、テンポが合っていて、それがまたすごく格好いい。鳥肌立ちますよ。
09 盛り上がる人たち
すごく盛り上がってたでしょう(笑)。パーティーの乾杯に始まり、ひとりの人物を持ち上げ、子供が生まれて、でも、泣いて悲しんだり。この曲に出てくる人たちは、すごくいい人たちなんです。
盛り上がる人たちは、ここで初めて出てきたのではなく、実はすでに何度も登場してますからね。『koniwa』の後半にも出てきているし、『No Massage Rap』のお客さんもこの人たち。実は大活躍しているんです(笑)。天丼的な出演者でもあるという。
主に事務所の後輩芸人たちですけど(笑)。盛り上がっている人たちを見るのってすごく楽しいんですよ。自分が盛り上がってなくても。結婚パーティーで新郎が胴上げされている姿とかを街角で見かけると、「いいねぇ」って思うし、その感じを表現したいなと。「集団」というキャラクターができあがるのはおもしろいんじゃないかなと思って作りました。
10 Pringles and Bass
「プリングルス」のネット上のバナーCMのために作った曲で、プリングルスを食べる音をマストで入れた音楽を作ってくださいと依頼がありまして。それがまさに「SymmetryS」を録音しているタイミングだったんです。プリングルスの缶を振る音だったり、かぶりつく音以外はベースの音しか入ってないので、「ドラムンベース」という音楽をもじって、「Pringles and Bass」というタイトルにしました。できた瞬間に、「まさにヘッドフォンオペラ」と小林くんも言ってくれたので、今回のアルバムに入れました。『盛り上がる人たち』でも何かをカリカリ食べるシーンがあるんですけど、それは本当に偶然なんですよ。プリングルスを食べる音は、ヘッドフォンで聴くと非常に気持ち悪いんですよね。僕が食べてるんですけど(笑)。
11 サンプラー作文
手品みたいな曲ですよね。
一番最初にアイデアが出たわりには、一番最後にフィニッシュしましたよね。
すっごいむずかしかったです。僕は作家としてはマゾヒストだと思っていて、むずかしければむずかしいほど、「この問題絶対解いてやる」という欲みたいなのが出るんです。途中の段階で田中さんがOKを出してくれたんですけど、もうちょっとバラバラなものだったんですね。今は流れが出来てますけど、あまり流れが出来ていなくて。この曲に関しては、なんだか自分的に妙に自分に厳しくなってしまいましたね。でも、ずっと腑に落ちなかった部分がポンとわかった瞬間があって。そしたらどんどんパズルがつながっていって、最終的にはストーリーが成立したんです。紆余曲折を経て絞り出した感じの曲ですね。
非常に「らしい」作品ですよね。サンプラーという楽器というか機材をお笑いに使うというのが。非常に新しい使い方だと思います。そういう意味では有意義でエポックメイキングなトラックですね。
冒険であり実験であり、でもちゃんと安定するところまで持ち込めたというか。まぁ、無理矢理っちゃ無理矢理なところもあるんですが……そこを楽しんでいただければと(笑)。とてもシンメトリーズっぽいものができましたよね。
もちろん盛り上がる人たちは、ここでも出てきます(笑)。
13 卒業生イン・ザ・ハウス
ボーカルの子が可愛いんですよ。最初は僕が声を高くして歌ったりとか、普通に歌ってピッチをあげてみたりとかしたんですけど、なかなか納得のいく状態にならなかったんですよね。そしたらいいボーカルに出会えて。「FONK」というエイベックス所属の少年ラッパーが可愛く歌ってくれました。
『おしりかじり虫』のあとの『みんなのうた』のポジションを狙ってます(笑)。でもね、今年小学校を卒業したりする子たちは、生まれたときからヒップホップがあって、ヒップホップが特別なものではない世代ですから。だから、そういう世代の卒業ソングは、『ほたるの光』ではないんじゃないかと。びっくりしたのがね、小林くんはこのライミングバリバリのリリックをですね、たった一晩で書き上げて来たんですよ。見事なんもんですよね。
コレが上手いんですよ(笑)。でも、今思えば、この歌詞は大体僕のことですね。花の蜜もなめてましたし、ジャンボ定規とリコーダーで戦いましたし、カーテンに巻きつきましたし、傘立ての傘に水入れてましたし(笑)。『卒業生インザハウス』は、急に正義の作品ですよね。
アルバムは『sex』から始まってるのに(笑)。でも僕らはこのアルバムを子供向けの作品とも、大人向けの作品とも思われたくなかったんですよね。確かにこのトラックは他のトラックに比べると優等生的な作品なので、それをすんなり入れるのには多少の照れが正直あるんです。でもまぁ、何をやってもいいだろうと。
振り子で言うと、一番エッジにある曲ですよね。最初の『sex』と『卒業生インザハウス』が両エッジにあるというか。このあとは『結婚式インザハウス』を作ります(笑)。
15 Samurai Breakin’(Short Version)
これもたまたま、「NIKE+」の企画のために作った曲なんです。為末大くんの足音と、ドラゴンアッシュのATSUSHIくんのタップやハンドクラップの音を録りこんで、音楽に消化するという作業だったんですけど、これも非常にシンメトリーズ的なアプローチではないかと。
『Record of Records』で世界記録をいろいろと言っていて、最後にはメダリストの足音が入ってますからね。完璧です。
田中 そういう意味で「オチ」のトラックです。iTune上で限定でリリースしていたものを、ややコンパクトにして、このアルバムの最後に入れました。